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♪指揮者にとって大切なこと♪

それは、まず作品と向かい合い、そのイメージをオーケストラの演奏家に伝え、その演奏を聴衆に聴いてもらうことだろう。だから指揮に派手なジェスチャーやパーフォーマンスは必要ないのではないかと思う。僕はできるだけシンプルに分かり易い指揮をめざそうと思う。


♪作品の本質に迫る♪

作品を、たった今創られたかのように新鮮に響かせたい。簡単なことではないが、それが僕の目標だ。それには徹底した楽譜の読みと、芸術全般に対する造詣の深さが要求されるだろう。さらに古典作品では、印刷楽譜が、ほんとうに作曲家の意図を反映しているのか、演奏方法はその時代に相応しいか、ということにも注意をむけなければならない。例えばシューベルトの交響曲は長い間、ブラームスが校訂した楽譜によって演奏されてきた。しかしそのことは長い間知られていなかった。シューベルトの自筆譜と印刷楽譜を比較してはじめてそれが判る。その違いは驚くほど無数にある。僕はシューベルトの交響曲の演奏には、原典資料を使ってオリジナルに近い状態に復元した楽譜を使っている。そのことで、少しでもその本質に近づけるのではないか、と確信している。


♪アーノンクールから学んだこと♪

多くの人がカラヤン、バーンスタインに魅せられ、憧れていた1980年代。僕はある一人の音楽家に注目していた。当時、僕はドイツのケルン音楽大学指揮科に在籍していた。偶然のきっかけで、アムステルダムで、名門コンセルトヘボウ管弦楽団のリハーサルを聴く機会に恵まれた。指揮者はニコラウス・アーノンクール。当時はまだ「知る人ぞ知る」という存在で、そのモーツァルトの演奏が賛否両論を巻き起こしていた。しかし高校生のころからバロック音楽に関心をもち、日本で音楽学を勉強していた僕には、アーノンクールの意図はすごくよくわかったし、共感できた。ちょうどその直前に発表された「未完成」交響曲の録音に感心していたところだった。。何度かドイツで実演は聴いていたが、リハーサルを聞けるのはまたとないチャンス。そして、それはその後の僕の音楽観を大きく変えるターニングポイントとなった。彼の指揮は決して流麗とはいえない。だが楽譜の読みの深さ、歴史的なアプローチ、溢れる音楽性はほんとうにすばらしい。リハーサルから僕は深い感銘を覚えた。それ以来、何度となくリハーサルや実演を聴き、日本の音楽雑誌のためのインタヴューや著書「音楽は対話である」(那須田務氏と共訳:アカデミア・ミュージック)の翻訳を通して、アーノンクール自身とも面識を得た。彼の音楽思想から本当に多くを学ばせてもらった。それを少しでも自分の演奏に活かすことができれば、と常に思っている。